ゲスナーによる霊魂の幾何学的図解

 死後に出版されたこの書物のなかでゲスナーは霊魂を図解しようとしています。彼が提示する霊魂とは次のようなものです。

 この3つの円のつらなりとして霊魂をあらわすことができるとゲスナーは考えていました。一番上の理性(Dの部分)から想像力の段階を経て下降して、共通感覚にいたるということになっています(5つ線が出ているところは、それぞれの線が五感をあらわす共通感覚部分)。一番上の理性には羽がついていて、これで上昇して神と合一しようとしています。最上部で輝いているのが神です。

 もっと精妙な絵が欲しい場合は次のような絵を描くとよいとゲスナーは言っています。

 ここでは一番上に天使(左側)と悪魔(右側)が描かれています。両者とも人間の霊魂の理性的部分を紐で引っ張っているように見えます。しかしよく見ると悪魔の方の紐は理性にしっかりと固定されていません。一番下では骸骨が下の2つの円の結合部分を紐で引っ張っています。これは人が死んだ時には理性的霊魂以外の部分は朽ちてなくなるということを意味しています。

 ゲスナーはこの絵が「死についてのある種の観想」に有用だろうと述べています。以前ここで取り上げた往生術というジャンルでもまた、天使と悪魔の抗争の様子が描かれていました。とするとゲスナーの霊魂の図像化も往生術の伝統に連なるのではないかと思われます(強い根拠があるわけではありません)。ただしゲスナーの特徴は霊魂が幾何学的に表されていることで、彼によればこうすることで物質とは異なる霊魂というものを適切に表現できるとのことです。