ビベスの霊魂不死性論 Clements, “A Sixteenth Century Psychologist on the Immortality of the Soul: Juan Louis Vives”

  • Raymond D. Clements, “A Sixteenth Century Psychologist on the Immortality of the Soul: Juan Louis Vives,” Bibliothèque d’humanisme et Renaissance 28 (1966): 78–88.

 ファン・ルイス・ビベス(Jean Luis Vives, 1492–1540)の霊魂不滅論を扱った論文を読みました。往年の論文といった風情で自由な論述となっています。ヴィヴェスによると、霊魂の不死性をめぐる問題がこれほどまでにこじれてしまったのは、感覚から与えられる情報以外を信じようとしない者たちの責任です。しかし彼らの言い分とは裏腹にさまざまな論拠から人間霊魂が不死であることは証明可能だと彼は言います。人間霊魂は神が特別に想像したもので、一般的な自然より上位に置かれている。よってそれは自然に課せられた可死性をまぬかれている。人間霊魂は霊的な存在が不死であることを認識できる。この認識ができること自体が霊魂の不死性の証しだ。また徳の報いはこの世ではなくあの世で与えられるし、人間が本性的に備えている知への欲求はこの世では満たされることはできず、その完成は次の世をまたねばならない。蛮族を含めすべての民族が宗教と神、倫理、正義の観念を持っており、これらの観念は霊魂の不死性につながる。このようなヴィヴェスの議論の背後には、霊魂の不死性を哲学的に証明することは不可能であると述べたポンポナッツィの立論への対抗心があったと思われます。ヴィヴェスの議論は明らかにスコラ学の伝統に根ざしたものであるものの、それを極度にテクニカルな形ではなく、同時代の知識人のいわばコモン・センスに訴える形で展開をしている点に、人文主義者による霊魂論の特徴があると著者は言います。