ケンブリッジプラトン主義者の有機体論 Cheung, Res vivens: Agentenmodelle organischer Ordnung, ch. 2

  • Tobias Cheung, Res vivens: Agentenmodelle organischer Ordnung 1600–1800 (Freiburg: Rombach, 2008), 41–71.

 新しめの研究から、ケンブリッジプラトン主義者とその周辺の人物たちがいかに有機体にみられる秩序を説明したかを論じた部分を読みました。ヘンリー・モア、ラルフ・カドワース、ジョン・レイ、ネヘミア・グルーらは、諸粒子の物体の運動と衝突だけで現象を説明できるとするデカルトの哲学に満足できませんでした。とりわけ有機体の形成や成長といった現象を、デカルトが想定するような完全に不活性な物質から説明できるのかという点が疑問視されます。このような現象を説明するため、彼らは新プラトン主義に基礎を置く宇宙神学的な枠組みを採用し、そこに有機体現象を説明する原因を探りました。彼らはデカルトと同じく物質はまったく受動的であると考えました。この受動的構成要素が、一定の目的に沿って構成された統一体をどうなすのか。それは物質に働きかけ、それを一定の目的に向けて動かすような非物質的な力があるからであると彼らは考えました。この力は論者によってさまざまな呼ばれ方をします。自然の精気、形成的自然、生命原理といった具合です。こういった力が適切に配置された質料(しばしばorganismと呼ばれる)と出会うことではじめて、生命体が成立するとされます。

 興味深かったのはグルーの理論です。グルーによれば有機体の身体というのは一つの統一構造をなしている。だからたとえばある動物の耳さえ見れば、その耳がどの動物の耳であるかを言い当てることができるというのです。グルーはさらにこのような構造体は、それを取り囲むまわりの物体なり環境なりと適合するようなものとして、創造神によって最初に構想されたのだと論じます。キュビエの生存条件論(conditions d'existence)に近い着想がここには見られます。