知の世俗化 宮下「図書館・書斎、そして印刷術」

哲学の歴史〈第4巻〉ルネサンス 15‐16世紀

哲学の歴史〈第4巻〉ルネサンス 15‐16世紀

 なんともすばらしい小文です。中世からルネサンスにかけて知識の担い手が聖職者から俗人へと拡大していきます。それにともない大学ができ、そこでは少数のテキストを繰りかえし読んで叡智を得るという修道院スタイルから離れ、おおくの本から引きだされた多くの情報をもとに論拠にもとづく議論をいかに戦わせるかが重視されるようになります。これらの動向から飛ばし読みが可能な黙読、情報をすばやく見つけるための工夫(段落、小見出し、索引)、口承韻文の散文化、ローマン体の発明、活版印刷術がつぎつぎと編み出されていきました。おおくの本を所蔵するための大規模図書館もつくられます。それらの中には個人の図書館もあり、たとえばジャン・グロリエはリヨンにて3,000巻以上の蔵書をおさめた私設図書室を構築していました。モンテーニュは塔のにつくった図書室が自慢でした。『エセー』第3巻第3章にある「三つの交際について」という章で彼は図書室について語っています。と、ここでここまでまとめてきた内容とはあまり関係ないのですけど『エセー』同巻同章にいい言葉あったので引用を。

どこであれ、引き籠もる場所には散歩するところ(プロムノワール)が必要だ。私の思考は座らせておくと眠ってしまうのだから。脚が精神を揺さぶるかのように、私の精神はひとりでは進んでくれない。(351ページ)

 前後の文脈とのつながりとか正確な文意とかはいまいちわかりません。でも印象的なパッセージです。みなさんの引き籠もる場所には散歩するところはありますか?