ぼっちの斉一論者 Rudwick, Worlds Before Adam, ch. 24

Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform

Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform

  • Martin J. S. Rudwick, Worlds Before Adam: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Reform (Chicago: University of Chicago Press, 2008), 347–61.

 ライエルの『地質学の原理』第2巻と、それへの反応を扱った章です。ライエルは第2巻で有機体の世界でいかなる現在因が作用しているかを網羅的に取りあつかおうとしました。そこで彼が前提としていたことは、個々の生物種は不変であるということと、それらの種は長きにわたる時間のなかで、それぞれがあたかも個人のように誕生しては死滅していくということでした。最初の論点はラマルクの進化論の否定を意味します。ライエルは進化は現在進行中のものとして観察によって確かめられていないと論じて、ラマルクの学説をしりぞけました。第二の論点は、種の出現と死滅という点ではキュビエをはじめとする多くの論者も一致して認めていました。ライエルに特徴的なのは、種の誕生と死滅がある特定の時点における環境の激変により一斉に起こるのではなく、むしろ誕生と死滅は自然の日常的なプロセスであり、すべての時間軸にわたって均等に分散していると考えた点でした。これもまた過去の事象は現在の事象から説明できるというライエルの現在主義の帰結です。過去に特別な激変があり、それが特別な生物相の変化をもたらしたと考えるのではなく、いまと同じことが過去においても同じように同じ程度で起こっていたと考えるわけです。ライエルがもう一点強調したのは、種の誕生と死滅にはなんらの定向性もないということでした。しかし化石は明らかに単純な生物から複雑な生物への移行を指し示しているではないか?このありうべき反論に対してライエルは、化石となった生物というのは過去の全生物からするとほんの一部であり、しかも生物のうちでも海洋生物、とりわけ骨や貝をもった生物が残りやすいという傾向性があると論じました。ここからたとえ哺乳類の化石が古い時代の地層から見つかっていないとしても、それはその時代に哺乳類がいなかったことは意味しないとライエルはするのです。

 『地質学の原理』にたいする書評が直ちにウィリアム・ヒューウェルによって書かれます。彼はそのなかでライエルが理論を打ちたてようとしていること、およびその理論が現在主義によって貫かれていることを高く評価しました。ヒューウェルもまた過去の事象は基本的に現在観察可能な原因から説明されねばならないと考えていました。しかし新たな生物種の出現だけは、現在因をもってしては説明できないのではないかとヒューウェルは疑問を呈します。この点において彼は地質学者を二つの陣営に分けました。一つは自分を含めてほとんどの地質学者であり、彼らは過去における(とりわけ生物種の出現の時点での)激変を信じる激変論者です。もう一つのグループはグループと言っても実はライエルしかおらず、これは現在の世界と過去の世界で完全に同じことが起こっていると考える斉一論者でした。現在の原因がそれと同じ強度で過去においても常に働いており、それゆえ地球の歴史には定向性はなく定常的だと考える点でライエルは孤立していたのです。