- 作者: 上智大学中世思想研究所
- 出版社/メーカー: 知泉書館
- 発売日: 2013/03/30
- メディア: 単行本
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アウグスティヌスにとっての知解が神学的性格を有していたとする論考である。アウグスティヌスが「あたなが信じていなかったなら信じなさい。なぜなら、知解は信仰の報酬であるから」(63ページ)と論じたことはよく知られている。ここには信仰から知解ヘという順序が示されている。しかしここから信仰と知解を切り離してしまうなら、アウグスティヌスの意図を読み違えることになる。というのも彼にとって知解とは、人間が自らのうちにあるキリスト、すなわち神の知恵に頼ることによってはじめて可能となるからである。人間は神から無償で与えられたこの知恵を、(神の子の受肉にあらわれているへりくだりのさまにならって)謙虚に愛さねばならない。この愛としての信仰により内なる知恵と対話することが知解を可能とする。知解とは信仰と切り離された理性の営みではない。知解の営み自体が神への信仰を通じて成就されるのである。この信仰が知恵を愛することであるのだから、知解とはフィロソフィアの原義に忠実であることになる。