ガリレオ入門 マクマラン『ガリレオ・ガリレイ』

ガリレオ・ガリレイ―宗教と科学のはざまで (オックスフォード科学の肖像)

ガリレオ・ガリレイ―宗教と科学のはざまで (オックスフォード科学の肖像)

  • ジェームズ・マクマラン『ガリレオ・ガリレイ 科学と宗教のはざまで』野本陽代訳、大月書店、2007年。

 大月書店から出版された「オックスフォード科学の肖像」シリーズの一冊です。奥付けをみると2009年の時点ですでに第3刷が発行されており、好調に売上を伸ばしていることがみてとれます。じっさいガリレオの生涯とその科学上の業績を簡潔に分かりやすく記述した好著です。同種の本としては岩波新書青木靖三『ガリレオ・ガリレイ』の方が水準が高く、読んで楽しめるとは思うものの、青木本が残念ながら品切れである以上、このマクマクランの本からガリレオに入るのもよいですね。より詳しく知りたい場合、裁判についてはファントリ『ガリレオ』を、運動理論については高橋憲一ガリレオの迷宮』を読みましょう。

 マニアックな楽しみ方をしたい場合は、「縮尺と骨の強さ」という巻末近くのコーナーに着目してみるのはどうでしょうか。「最初にスケーリングに関する考察について書き残したのはガリレオであった」(130ページ)とのことです。これはあまり彼の主要な科学上の業績とは関係ないのですけど、なぜか主著『新科学論議』はこのスケーリングの話からはじまって度肝を抜かれます。しかもブレヒトが『ガリレオの生涯』で唯一ガリレオの書物から直接引用する箇所もこのスケーリングに関する部分です。というわけでこのコーナーの存在には著者の適切な配慮が感じられるわけです。

 一つ驚いたのは、アリストテレスのことを「紀元前三世紀のこのギリシア人」(15ページ)と書いていることです。翻訳の間違いかなと思ってもとの英語にあたってもやはり「紀元前三世紀」と書いてある。なんというミスでしょう。やはり数字は怖い。なお翻訳には気になるところも多々あるものの、読んで楽しむ分には問題ないように思えました。

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