17世紀英国での原子論的発生論の批判 Goodrum, "Atomism, Atheism, and the Spontaneous Generation of Human Beings"

 人間をふくめてすべての生き物は最初に原子の偶然の運動によって自然発生(生殖によらない発生)をしたという考えをルクレティウスは『事物の本性について』で提示している。この原子論における発生理論を、英国のMatthew HaleとRichard Bentleyがいかに批判したかを検証した論文である。彼らの批判は有機体のような目的にかなった組織体が偶然に生まれるはずがないというものであった。原子論の想定は不可能であるばかりか、それを認めてしまえば世界には神が不要となり無神論が肯定されてしまう危険な学説であるとも彼らは考えていた。一つ興味深いことに彼らは、原子論における発生論とキリスト教とを両立させようとしたガッサンディの試みには触れず、もっぱらルクレティウスの発生論を攻撃している。