科学史における地域性 Chambers and Gillespie, "Locality in the History of Science"

 かつて植民地であった地域を題材とする科学史の記述はいかにあるべきかを論じた綱領的論考である。ジョージ・バサラが提示しした中心から周縁への拡散モデルから、知識生産への地域性(locality)の寄与を考慮した歴史記述へと向かうべきだし、現に科学史研究は向かっていると論じられる。そのさいに、地域性をどのように設定するか、その地域性のうちでいかなる(制度的なり環境的なりその他の)要因が科学知識の生産に利用されているか、さらにはそうやって利用されている諸要因は知識生産との中心とのあいだでいかなるネットワークを形成しているかが問題となるという。くわえて土着知の体系(indigenous knowledge systems)を普遍的(とみなされている)西洋の知に還元しないで理解し、またそれを保存する必要性と、そもそもいかに西洋の知が普遍的とみなされるにいたったかを探求すべきとされる。