カルヴァン主義スコラ学の成立 Donnelly, "Italian Influences on the Development of Calvinist Scholasticism"

  • John Patrick Donnelly, "Italian Influences on the Development of Calvinist Scholasticism," The Sixteenth Century Journal 7 (1976): 81-101.

 カルヴァン主義スコラ学の確立に、イタリアからの亡命知識人が寄与したと論じる論文である。16世紀半ば以降、カルヴァン主義の神学は転機を迎え、カルヴァン主義スコラ学ともいうべきジャンルが誕生した。これは理性を頼りに、論理的に一貫した神学体系をアリストテレスを基盤にうちたてようとする運動であり、形而上学的な問題を深く考究するものであった。このようなジャンルが成立した原因はいくつかある。その一つはセルウェトゥスやその他の異端的思想家たちが、キリスト教の根本教義に疑念を投げかけたことにあった。たとえば三位一体である。これらの思想家から三位一体の教義を守ろうとすればそれを正当化せねばならない。三位一体の教義はそれ自体が形而上学的な性質をもつので、ここにおいてカルヴァン主義者たちも形而上学へと回帰する必要が生じたというわけである。こうして神学と哲学の混合に強い警戒をしめしたルターやカルヴァンといった初期の改革者たちの姿勢とは対極の性質を持つ、スコラ学がプロテスタント陣営にも誕生した。本論文後半ではこのスコラ学の確立に、Pietro Martire Vermigliと、ヒエロニムス・ザンキウスが果たした貢献が論じられている。