スカリゲルの混合論と形相の階層構造論 Blank, "Scaliger on Plant Generation" #1

 重要文献の第3節(271-274ページ)からのノート。

 スカリゲルはその混合論のなかで、まず微小な粒子が結合して一つの事物を構成することをみとめる。たとえば異なる種類の穀物の粒の結合体がそれである。この場合、構成要素のそれぞれは各自の空間的境界線を保持しつづけている。それは真の混合物とはみなせず、単なる集積である。真の混合体といえるためには、構成要素の境界線は消滅し、一体の連続した境界面を結合体が持たねばならない。だがこのような混合物においても、それら構成要素の実体形相は残っている。構成要素はこの時数学的には個別化されていない(境界線は消滅しているから)。だが自然的には個別化されている(それに固有の実体形相によって形相づけられているから)。このようにすべての混合物のうちでは、実体形相が複数存在している。(続いて実体形相は道具の介在なしに質料に働きかけるという論点が紹介される)。

 では有機体において器官の形相は、その有機体そのものの実体形相といかに関係しているのか。ある箇所でスカリゲルは形相が別の形相を形相づけるということを否定している。ここから彼が有機体の支配的形相(つまり有機体そのものの形相)が器官の形相を形相づけるとは考えていなかったと推測される。むしろスカリゲルは形相がもつ目的論的な本性から、一つの実体における複数の実体形相のあり方を説明する。形相のあいだには、より下位の形相がより上位の形相のためにあるという上下関係が認められるというのだ。ここからスカリゲルはある形相のあり方を、それが上位の形相のために果たす機能の有無によって区別するということを行う。たとえば生きている生物の骨は死骸の骨とはちがう。なぜなら生きている身体にある骨の形相は有機体の一部としての機能を果たしているからである。

 目的論はまた形相が混じりあって、一つの存在者を形成するというスカリゲルの言明をも説明する。ある形相は別の形相よりもより高貴である。この時下位の形相は上位の形相のためにある。この考えを有機体に適用しよう。器官の形相は、有機体の形相よりも下位である。器官は有機体のためにつくられている。この意味で下位の形相のすべては上位の形相にむかっており、この意味で下位の形相はまぜられ一体の混合物を形成することができる。