番組改変問題

 この問題の経緯は朝日新聞のサイトに書いてあるとおりです*1

初報となった本年1月12日付朝刊の記事の骨子は、問題となった番組の放送前日に、中川昭一安倍晋三の両衆院議員が松尾武放送総局長(当時)らNHK幹部を呼び、番組を「偏った内容だ」と指摘し、NHKは内容を変えて放送した、というものである。これに対し、中川氏からは「NHK幹部と放送前日に面会した事実はない」、安倍氏からは「NHK幹部を呼んだ事実はない」、松尾氏からは「取材には『政治的圧力は感じていないと答えた』のに内容をねじ曲げられた」などの反論が寄せられた。

 この問題に対する朝日新聞の最終的な見解は

その結果として、1月の最初の記事には不確実な情報が含まれてしまいました。「呼び出し」でなく「会って」と表現しても政治家の影響を伝えることができたし、中川氏の面会は「放送前日」と断定しない方が適切だったと思います。

と記事の書き方が不適切であったことを認める一方で、安部氏や中川氏がかけた政治的圧力の結果番組内容が改変されたという点については、訂正の必要を認めない、というものです。

 この朝日新聞の見解にたいして、他マスコミがいっせいに反発しています。産経新聞などは社説で、朝日新聞は安部氏らに謝罪するべきだ、とまで言っています。

 ただ『月刊現代』に、どう考えても取材テープから起こしたとしか思えない記事を魚住氏が載せた今となっては、産経や読売の「そもそも圧力はなかったということを朝日は認めよ」という意見は説得力を失っています。

 たぶん一番本質的なのは毎日新聞の指摘で、以下のように書いています。

仮に〔取材資料の〕流出元が朝日の取材班の一員だとすれば、その狙いは何だったのか。詳細な報道は自社の紙面では無理だとあきらめたのか、他のメディアを味方につけようとしたのか。本来、自らの紙面で決着をつけるべきであり、言い足りない点があれば記者会見をして広く国民に判断を委ねればいい。メディアに属する人間が匿名で他社にリークするのは邪道である。

 要するに毎日新聞はこう言いたいわけです。朝日としては取材時に録音していないといってしまったために、いまさら録音テープがありましたともいえない。そのためNHKや政治家サイドに反論することが難しい。だから、外部のフリーのジャーナリストに録音テープ(かそれをおこしたもの)を渡して、ソースを秘匿するという条件の下に、決定的な記事を書いてもらう。そうすることで、朝日自身の録音テープの存在は曖昧にしたまま、事実関係としては安部、中川両氏の圧力があったということにしてしまう。このような狙いを持って、朝日は故意に取材資料を流出させたのではないか。

 ここまで露骨な意図を朝日新聞が持っていたかどうか、情報の流出は組織ぐるみなのか、誰かの先走りなのか、などの問題はもはや闇の中かもしれませんが、この取材資料の流出がかなりきな臭いものであることは明らかなように思えます。

 そして、この朝日新聞との問題とは別に、安部晋三氏や中川昭一氏の政治家としての見識も問題にされるべきでしょう。