バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会 報告書をめぐる報道について

 少しだけ気になった点を。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200612260348.html

研究会は4月から、携帯電話や家庭用ゲーム、アダルト漫画が子どもに与える影響を検討してきた。このうち、アダルト漫画について、大手書籍販売サイトで売られていた約9千冊から100冊を無作為に選んで調べたところ、30冊が子どもを性行為の対象に描いたもので、うち5冊はランドセルを背負っている様子などから小学生以下と受け取れるものだった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061225i114.htm

報告書によると、警察庁が先月、約9000件のアダルトコミックのうち100件をサンプル調査したところ、30件に子供を性行為の対象とした描写があり、うち5件は小学生以下の子供だった。

 この朝日と読売の報道は正確さという点で、少し問題があるように思えます。なぜなら、報告書を読むと次のようにあるからです*1

平成18年11月、アダルトコミック等を総合的に取り扱っている大手書籍販売サイトの販売状況を基に実施した、警察庁のサンプル調査によれば、アダルトコミック約9,000件の3割が表紙等から子どもを性行為等の対象とするコミックではないかと推測され、さらに、ランドセル等の描写から小学生以下と受け取れる子どもを性行為等の対象としているものも相当数販売されていることが推測される。(25ページ)

販売サイトで登録・販売されているコミック等のうちサンプル抽出した100件中、表紙中の学生服、教室等の描写、タイトル中の「少女」、「学園」等の文言から子どもを扱っていると受け取れるものを計上している。(25ページ)

 まずつまらない点から指摘すると、朝日の記事では、まるでこのサンプル調査を研究会が行ったかのように書かれています。しかし、実際に調査を行ったのは警察庁です。でも、これは限られた紙面で報道しなければならない以上は仕方ないことなのかもしれません。

 また、朝日と読売の記事に共通する問題点として、報告書にある「推測され」という文言が消されていることをあげることができます。警察庁はコミックの中身は調べていません。あくまで表紙や表題から内容を推測しているわけです。正確さをこころがけて報道するならば、やはり記事のほうにも「30件に子供を性行為の対象とした描写があると推測された」と書くべきだと思います。

 確かにあげ足取り的な指摘かもしれません。しかし正確に報道している記事もあるのです。

産経ニュース

また、報告書は幼い子供を描いたポルノコミックがインターネットの書籍販売サイト(サイト書店)で公然と販売されている実情に着目。大手のサイト書店のサンプル調査(11月)の結果、販売された成人向けコミック約9000点の3割が子供を性行為の対象としていると推測している。アニメ(16%)やゲーム(12%)より比率が高い。

アダルト漫画、「子供」との性行為が3割~書籍販売サイトに販売停止提言

大手書籍販売サイトのアダルトコミックの販売状況をもとに調査したところ、約9,000件の3割は、表紙などから子供を性行為の対象とするコミックであることが推測されたという。また、小学生以下を対象としたものは5%と推測されている。

 ただ産経の記事は、見出しにかっこ付きで「児童ポルノ」と書かれている点が気になります。

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」を見ると、児童ポルノというのは、「写真、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう」(第2条)云々と定義されています。ここにはコミックは含まれていません*2。このことは報告書内にも明記されています(23ページ)。

 わざわざ「児童ポルノ」と見出しに書いた意図は分かりませんが、かなり問題のある見出しだと思います。

以前の記事:「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守るために 最終報告書」を読んで]