- 作者: Charlotte Methuen
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 1998/06/25
- メディア: ハードカバー
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読みました。序文はすばらしい。これまでの宗教改革史研究の問題点を的確に指摘しています。でもその序文の問題提起に見合った分析が本論ではなされていない印象を受けました。
個人的に気になったのはフィリップ・メランヒトン(1497-1560)からの次のような引用です。
Quin potius, ut Plato dixit, Deum semper geometrein[Greek], hoc est, certissimo motu omnia metientem gubernare haec inferiora: ita nos vicissim huius summi artificis lineas considerantes hac pulcherrima geometria nos oblectemus, quae divinitatem nobis ostendit.
実にプラトンは次のように言った。神は常に幾何学を行っていると。これはすなわち、神はこの上なく確かな運動によって、この下界の事物のすべてを測り支配しているということである。この至高の製作者の〔作り出した〕直線を交替で考察している私たちは、この極めて美しい幾何学(これは神性を私たちに示す)を楽しんでいるのである*1。
神は常に幾何学を行うという言葉をケプラーもまたプラトンに帰しています(実際にはプルタルコスの言葉なのに)。Methuenによるとこの言葉はケプラーの天文学の先生にあたるメストリン(1550-1631)は使っていないそうです。だからといってケプラーのソースがメランヒトンということにはならないでしょうけど。
また「自然という書物」という比喩を多用した人物として、Jacob Heerbrandがあげられています。ケプラーも同じたとえを用いています。この点についてMethuenはケプラーが「自然という書物」というたとえを用いたのはHeerbrandの講義を受講し、また彼の本を読んだことからきているに違いないと断言しています。うーむ。
*1:Melanchthon, Praefatio in Theorica novae planetarum, in Corpus Reformatorum, vol. 2, C. G. Bretschneider ed.,p. 817. Methuen, Kepler's Tübingen, 82.