混交研究その13 - Avicenna, De generatione et corruptione

  • Avicenna, Liber tertius naturalium de generatione et corruptione, ed. S. van Riet (Louvain: Peeters, 1987), 70-78.

 『シファー』の自然学生成消滅論の部分のラテン語訳です.

 いや,これ全然分からないのですけど….そもそもどこまでが彼の意見で,どこまでが他人の学説の批判なのかという,そういう論旨の構造のレベルですでに理解が行き届きません.アラビア語の勉強をさぼっていた自分を呪います.

 知りたいのは例えばコインブラ注解書が言う次のような話のソースです.

アヴィセンナによれば]混交の中で元素は完ぺきで無傷な形相を保持している.しかしその形相は分割されて,小さく細切れにされている.そうして諸元素の小部分(particula)が一定の順序で並んでつながることで,互いに一体化する.

 ここで形相が細切れになるという話が出てきます.これはザバレラには書かれていない情報です.なぜならザバレラのアヴィセンナ論はアヴェロエスをもとに書かれていて,アヴェロエスの『「天について」大注解』にはこの形相細切れ論がないからです.

 しかしこの細切れ論をスカリゲルは引いています.なのでザバレラと異なりスカリゲルはアヴィセンナを直接見ていたか,アヴィセンナを直接見ていた別の著作を見ていたことになります(ブッカフェラかもしれない).

 なのでこの細切れ論の出所をなるべくアヴィセンナ自身の著作の中で確定したいのですけど,いまいちそれらしき箇所に出会うことができません.もしかしたら…,という箇所が上の校訂本にあるにはあるのですが.もう少し調査が必要です.