混交研究その15 - スコトゥスについて

  • Duns Scotus, Lectura in librum secundum Sententiarum: a distinctione 7. ad 44., Ioannis Duns Scoti opera omnia 19 (Vatican: Typis Polyglottis Vaticanis, 1993), pp. 137-154 (lectura 2, distinctio 15).
  • Richard Cross, The Physics of Duns Scotus: The Scientific Context of a Theological Vision (Oxford: Clarendon, 1998), 71-76.

 そろそろ読書はやめにして執筆に移らないとまずいのですけど,スコトゥスの理論がよく分からなかったので予定を変更して読みました.

 知りたかったのは混交中の形相と質料がどこからもたらされるとスコトゥスが考えていたかです.これについてはコインブラ注解にもエマートンにも書かれていません.マイヤーは形相が「この世のものではない」原因によって混交中に生じると書いているだけです.

 というわけでまずはCrossの研究書を調べました.しかしこれは外れ.

 仕方ないのでスコトゥス自体を読んでみると,混交中の形相と性質は「aequivocusで普遍的な作用者(agens)」によって導入されると書かれています.しかしこの「aequivocusで普遍的な作用者(agens)」が具体的に何なのかは書かれていません.

 唯一のヒントはこのような混交中の形相の導入が鉱物の発生と同じメカニズムで生じると言われていることです.ではスコトゥスは鉱物の発生についてどのように考えていたのか?そんなの知らん!Adamsにもスコトゥスの鉱物論についての情報はなし.

 とりあえず,Michael Sylwanowicz, Contingent Causality and the Foundations of Duns Scotus’ Metaphysics (Leiden: Brill, 1996)によると,スコトゥスにとっての「equivocal agent」というのは基本的に神と天体(太陽)のどちらかを指すようです.で,どっちなの?たぶん両方かな….

 なおコインブラ注解によるとスコトゥスQuaestiones super libros metaphysicorum Aristotelisのbk. 5, text. 18でも混交について論じているそうです.