『意味がなければスイングはない』

意味がなければスイングはない

意味がなければスイングはない

 こんな本が出ていたので読んでみました。内容的にはジャズやクラシックやロックについて、特定の人物にスポットを当てながら記述しています。
 クラシックのところは、シューベルトやベートーベンなど誰でも知っているような名前しか出てこないです。しかし問題はジャズの箇所。とにかくまったく知らない名前が次から次へと(しかもそれが常識であるかのように)出てきます。村上氏はむかしジャズ喫茶をやっていたので、詳しいのも当然なのですが、これが音楽通の間では常識なのかと驚かされます。
 面白い点としては、個々のアーティストについて伝記的記述に多くが割かれている点です。一流の人たちというのはいろいろな意味で大変な人生を送っていることがわかります。
 でもいちばん面白いのは、著者が音楽の魅力をどうやって言語化しているか、という点です。さすがにその辺の音楽雑誌に書いてあるような、何を言っているのかまったく理解できない(のにやたら高揚している)記述にはなっていません。とはいえやっぱり苦労しているなぁ、という感じです。というわけで読んでいると日本語の勉強になります。
 しかし村上氏が書けば、僕のような音楽に興味がない人も一応買ってきてこういう本を読んでしまうのだから、彼が音楽について書く意義は大きいのでしょうね。