リプシウスとガッサンディ

H 『ガッサンディキケロということで思ったのですが、リプシウスの著作をガッサンディが読んでいたか?というのは、あんまり研究がないような気がするのですが、どうでしょうか?』 (2006/05/11 17:26)

>Hさん

 こんにちは。どうもありがとうございます。
 リプシウスをガッサンディが読んでいたのか、ということについての研究は、僕が知っている限りでは今のところないと思います。僕が知らないだけかもしれませんけど…。でもたぶんないです。
 それで、リプシウスをガッサンディは読んでいたのか、という問題自体については、読んでいたというところまでは確実に言えると思われます。『書簡集』の最初に収録されている手紙の中で、ガッサンディがリプシウスに言及していますから(知っていたらごめんなさい(>_<))。ただそこではリプシウスはすばらしい的なことは書かれていても、具体的にリプシウスの何を読んでどうすばらしいと思ったのかとか言うことは書かれていません。
 で、問題はガッサンディの『哲学集成』にリプシウスのテキストを利用した痕跡が見られるのかということなのですけど…。
 いや、この問題は気になってはいたのですけど、実はぜんぜん調べていません。リプシウスのテキスト(一番重要そうなphysiologia)が日本にないと思い込んでいて調査を断念していました。せいぜいSaundersの本を調べたくらいです。
 ただガッサンディは、リプシウスの後任教授であるPuteanusという人物とは何度か書簡の交換をしています。Puteanusはエピクロスをやっているので、重要な書簡のやりとりです。そこでPuteanusは、「ストア派は復興したんだから、エピクロス派はあんたが復興させなきゃ」とガッサンディに書き送っています。この前半部は明らかにリプシウスのことを指しているのだと思われます。
 あと、これは僕の個人的な妄想に近くなってくるのですけど、ガッサンディがオランダのいわゆる人文主義者たちから受けた影響というのはそれなりに大きいのではないかと思います。ガッサンディのオランダ旅行というとすぐにベークマンと接触、原子論に目覚めるという論が立てられますけど、少なくとも残された資料からはPuteanus、ハインシウス、Vossius、Goliusとの出会いも、ガッサンディにとっては大きかったと判断されます。このあたりSassenの研究書を手に入れられていないので、あまり強気なことは言えないのですけど。。。(でも修論ではある程度言いたいのかも)

 要するに、1. ガッサンディがリプシウスを読んだことがあると明言していて、2. ガッサンディがリプシウスの後任教授とやり取りしていて、3. ガッサンディとオランダ人文主義者との出会いは(僕の考えでは)重要、といった事情を考えてみたりすると、リプシウスとガッサンディとの関係は大いに調べてみる価値がありそうです(ほんとかな。。。)。
 それで今ご指摘を受けて調べてみたら、2001年に復刊されたリプシウス全集を入れている大学があるのですね。東洋大学にあるので見に行こうと思えば十分調査可能な場所にありました(調査不足でした…)。
 ただ「ガッサンディがリプシウスをどう利用したか」というだけだとあまりに広すぎるので、どこか狙いを定めて両者のテキストを読み進める作業がどうしても必要になるかと思うのですが、どこから手をつけたらいいのやらちょっと検討がつきません…。両方とも膨大といえば膨大な量を書く人ですから。。。
 ええっと、僕が知っているというか考えているのはこの程度のことどまりです。もし現時点でHさんが何か仮説なり見通しをお持ちなら聞かせていただけると、非常に助かりますし検討してみたいのですけど…。いや他力本願ではいけませんね。自分でももう少し調べてみます。
 なんか気持ち悪いくらいたくさん書いてしまって申し訳ありません(-_-;)。貴重なご意見ありがとうございます。
 でも両者の関係が見つかったら面白そうですねぇ(上の空)。