「ソロモンの知恵」

 旧約聖書続編「知恵の書」(「ソロモンの知恵」)第11章第20節:「しかしあなたは、長さや、数や、重さにおいてすべてに均衡が取れるよう計らわれた」(新共同訳)。泣く子も黙るクルツィウスによれば、「中世ラテン語のテキストを読む人は誰しも、聖書の言葉である『ソロモンの知恵の書』11,21の一文(中略)ほどしばしば引用され、暗示的に使用されるものは少ないことを知っている」そうです*1。この言葉の中世での使用に関してはKringsの論文がありますが、何を言っているのかまったく分かりません(評判もよくないようです)*2

 ラブジョイさんも挙げられているHistorisches Woerterbuch der PhilosophieのOrdnungの項目が参考になるかもしれません(でも長い…)。おおもとにはアウグスティヌスがいます(『神の国』11巻、『創世記注解』)。これに関してはジルソンが何か言っているらしいが見ていない…。

 ちなみにこの「ソロモンの知恵」という文書は紀元後一世紀に、アレクサンドリアギリシア語を話すユダヤ教徒が書いたもので、ヘレニズムの哲学思想の影響が強く出ている(ギリシア語で書かれている)。それでこれがフィロンを読んだ上で書かれたものなのか、それともフィロンとは独立に書かれたのかでもめているらしい。

*1:『ヨーロッパ文学とラテン中世』の735ページより。ウルガタでは第20節ではなく、第21節に入っている。

*2:Krings, H. 1940, "Das Sein und die Ordnung: Eine Skizze zur Ontologie des Mittelalters", Deutsche Vierteljahrsschrift fuer Literaturwissenschaft und Geistgeschichte 18, 233--249.