Lüthy, The Fourfold Democritus

  • Christoph Lüthy, “The Fourfold Democritus on the Stage of Early Modern Science,” Isis 91 (2000): 443-479.

 16世紀後半から17世紀前半にかけて提唱された原子論は,しばしばその提唱者たちによってデモクリトスに関連付けられてきました.しかし,その理論の内実を見ると,彼らの原子論にはデモクリトスの理論とは相いれない点が多く含まれていたことがわかります.それなのにどうして彼らは自らの見解をデモクリトスへと遡らせたのか.もしかするとデモクリトスは名前こそ言及されているものの,実際に彼の理論が初期近代に与えた影響というのはほとんどないのではないか.

 このような疑問に対して,Lüthyは当時考えられた「デモクリトス」は現在の古代研究者が再構成しているデモクリトスよりも広い人物像を含んでおり,この拡張されたデモクリトス像が当時の原子論者たちに自らの理論の起源をデモクリトスに求めることを可能にしたと論じます.

 と,問題設定の段階で期待を高めさせておいて,実際の中身はそれほどでもないという….