ベーコン論文刊行

 8月に投稿した論文が無事出版されました。

 この論文は2009年度春学期に東京大学で吉本秀之氏が開講したセミナー「フランシス・ベイコンとベイコン主義の位相」での発表を元にしています。

 実は所属している大学院で初期近代の科学史に焦点を絞ったセミナーが(集中講義以外で)開かれるのは初めてでした。そのためあまり下手なことは話せないと思い、それなりに時間をかけて発表の準備をしました。

 日本語が読めない人には読まれる可能性のない媒体での発表であるため、この成果をもってして外国文化研究者としての責務を果たしたとは残念ながら言えません。ただ限られた時間の中でやれることはできたと思います。博士論文が終わった後に英文にして発表できればよいと考えています。

 内容としては、新しい学問のあり方を提唱した革新者としてのベーコンではなく、直前の時代の自然学の学説を受けて、ベーコンが伝統的アリストテレス主義とは異なる物質論をどのように打ち出していったのかに焦点を当てたものとなっています。その際に「創世記」の記述の説明と、パラケルスス主義の受容が見逃せないということを主張しています。