第二世代の空気ポンプ

 Annals of Scienceの最新号に空気ポンプについての論文が掲載されていたので簡単な紹介です。

  • Terje Brundtland, "After Boyle and the Leviathan: The Second Generation of British Air Pumps," Annals of Science 68 (2011): 93-124.

 イギリスの空気ポンプといえば、ボイルが行った実験を政治的、社会的文脈に置いて分析した『リヴァイアサンと空気ポンプ』が有名です。これに対して著者はより技術的、実践的文脈への着目を掲げ、18世紀前半に用いられたポンプ、すなわちボイルらの第一世代の装置に続くいわば第二世代の空気ポンプの分析を行います。改良された空気ポンプはどのような用いられ方をされていたのか。「見せ物としての空気ポンプ」という通説には回収しきれないような利用方法を明らかにしています。

 科学的装置開発の歴史に関心がある人には、ある装置が当たり前のものとして受け入れられていわばブラックボックス化していく過程の一つの例として読めるかもしれません。

 個人的におもしろかったのは、病理標本作成のために空気ポンプが使われていたというところ。空気を抜いた状態の場所に対象を置いて、その上に金属を注ぐ。そうすることで標本内部を隙間なく金属で満たすことができ、質の高い標本ができると。