天使の認識論

  • 『トマスの天使哲学』James Collis The Thomistic Philosophy of the Angels (Washington, D.C.: Catholic University of America Press, 1947).

 今日はこの本の第4章「天使の認識 Angelic Cognition」を読んでノートをとりました。

 この問題の肝は、人間が物事を認識するときに生じている過程をどこまで天使にたいして適用できるかというところにあります。たとえば人間が何かを理解するときの出発点というのは常に感覚にあります。では天使も感覚から出発して何かを知っているのか?いや、でも天使には鼻と口とか目とかないいじゃない?そんなこの地上の物質から構成されているようなものを天使のような高次の存在が有しているなんておかしいじゃないか。だから天使は感覚を通じて外界から情報を得ることで何かを理解するんじゃないんだよ。天使にはあらかじめ神様から知るべきことがインプットされていて、必要なのはそのインプットされたものに注意を向けることだ。そうすれば天使はわざわざ外界を認知せずともいろんなことを理解できる。え?でも聖書にはアブラハムとかマリアとかの前に天使が現れて会話してない?あの天使たちってどう見てもアブラハムやマリアを見ている気がするんだけど。いやそれは…

 こういう形で人間でも神でもない天使の認識の様態をいろんな要素を勘案しながら確定する試みが中世では行われていたというわけです。