カルダーノ・プロジェクトの評価 Rambaldi, "Breve storia delle edizioni cardaniane"

  • Enrico I. Rambaldi, "Breve storia delle edizioni cardaniane del Consiglio Nazionale Delle Ricerche," Rivista di storia della filosofia 65 (2010): 745–73.

 イタリアでのカルダーノ研究をその校訂事業を中心にまとめた論考です。イタリアのカルダーノ研究は、ミラノの研究所で行われていたリベルタン研究の延長線上にあります。この著者はその研究所の所長をしていたのですけど、どういう経緯でか現在の「カルダーノ・プロジェクト」の中心にいる人々と対立関係にはいったようです。そのためでしょうか、この現在FrancoAngeli社から出されている校訂版にも厳しい評価を下しています。ネンチの『精妙さについて』はよいとしても、マクリーンの『自著について』とガルシア・ヴァルヴェルデの『霊魂の不死性について』と『一について』はさまざまな角度から批判されます。マクリーンは度重なる改訂によって生じた諸本文をまとめることなくバラバラのままの校訂版してしまい、著作の一体的理解を不可能にしてしまった。ガルシア・ヴァルヴェルデは問題の多い1663年の全集版にあまりに大きく依拠しており、信頼できる本文を提供できていない、といった具合です。現在最良の校訂版はパッサレッラによる『正書法について』であると著者はしています。

 当然反論があらわれており、次の論文として読むことができます。

  • Guido Canziani and Marialusia Baldi, "L'edizione delle opere di Girolamo Cardano: esperienze e riflessioni," Nuova rivista storica 95 (2011): 867–96.

 論争の評価はともかくとして、Rambaldiによるカルダーノ校訂版のリストアップはたいへん有用です。