キノの旅

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

読んでみました。なんていうかライトノベルという言葉から受ける印象とはやや違う読後感です。

そして暗闇が生まれた。

なんていう書き出しはいかにもファンタジーなんですけど、そのあとに続く話はファンタジーと呼ぶにはあまりふさわしくない感じです。
 ウィキペディアには「寓話的要素が盛り込まれており、強いメッセージ性が感じられる」とあります。うん。確かにそんな感じです。もうちょっとうまい表現がありそうなんですけど(メッセージ性という表現はいかにも不十分な感じです)、うまくいえません。

 ところで文章はけっこううまいです。

 真っ黒の画面に、ゆっくりと形と色が現れる。荒野の塹壕に何人もの兵士が怯えた顔で縮こまり、長いパースエイダーを握りしめている。やがてひゅるるると音が聞こえて、兵士が伏せる。モニターから音が一瞬消えて、画面が揺れて埃が舞い立つ。兵士の誰かが何かを叫んでいる。音が回復した瞬間、兵士達が一斉に塹壕を出て、突撃していく。画面もそれを追う。走る兵士達の後ろが見える。叫ぶ兵士の声が聞こえる。ぶんっという音がして、何か黒くて速いものが飛んでくる。一つは地面に当たって跳ね、画面左側を走る一人の兵士の胸に当たって、彼は身長が半分になる。

 個人的には最後の一文がいまいちですけど、でも全体としてはよく書けていると思います(漢字が多いですけど、本のほうではルビがふってあります)。いや、よく書けているというか僕個人の好みにあっているだけなのかも。。。とにかく文章にちゃんとリズムがありますよね。