キノの旅
キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))
- 作者: 時雨沢恵一,黒星紅白
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2000/07
- メディア: 文庫
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そして暗闇が生まれた。
なんていう書き出しはいかにもファンタジーなんですけど、そのあとに続く話はファンタジーと呼ぶにはあまりふさわしくない感じです。
ウィキペディアには「寓話的要素が盛り込まれており、強いメッセージ性が感じられる」とあります。うん。確かにそんな感じです。もうちょっとうまい表現がありそうなんですけど(メッセージ性という表現はいかにも不十分な感じです)、うまくいえません。
ところで文章はけっこううまいです。
真っ黒の画面に、ゆっくりと形と色が現れる。荒野の塹壕に何人もの兵士が怯えた顔で縮こまり、長いパースエイダーを握りしめている。やがてひゅるるると音が聞こえて、兵士が伏せる。モニターから音が一瞬消えて、画面が揺れて埃が舞い立つ。兵士の誰かが何かを叫んでいる。音が回復した瞬間、兵士達が一斉に塹壕を出て、突撃していく。画面もそれを追う。走る兵士達の後ろが見える。叫ぶ兵士の声が聞こえる。ぶんっという音がして、何か黒くて速いものが飛んでくる。一つは地面に当たって跳ね、画面左側を走る一人の兵士の胸に当たって、彼は身長が半分になる。
個人的には最後の一文がいまいちですけど、でも全体としてはよく書けていると思います(漢字が多いですけど、本のほうではルビがふってあります)。いや、よく書けているというか僕個人の好みにあっているだけなのかも。。。とにかく文章にちゃんとリズムがありますよね。