オカルト因
以前アダムさんに紹介してもらった論文を今頃読みました。まだ読んでいなかったのかといわれてしまうほど基本的な文献で、わざわざ紹介するのも気が引けるのですけど…。
Copenhaver, BP, ‘A Tale of Two Fishes: Magical Objects in Natural History from Antiquity through the Scientific Revolution’, Journal of the History of Ideas 52 (1991), pp. 373-398.
話の内容としてはシビレエイとコバンザメです。
シビレエイっていうのはこんなやつです。
頭部の胸びれのあいだの皮下に左右1対の発電器官があり、豆電球がつくくらいの電気を出す。大型種では約300Vもの発電能力があるといわれる。砂の中にもぐって眼だけ出していることもあり、素手でさわると感電する。写真のように黒いまだらの入った個体も多い。
シビレエイはこういう性質を持っていて、昔はこのしびれさせる力の原因が何か分からなかったので、説明のつかない現象の代表例として考えられていました。
コバンザメについては辞書を引くと
かつて船底にはりついて船の進行を妨げるとされた
とあります。コバンザメがこんな力を持っているというのは説明がつかないので(というかそもそもそんな大それた力は持っていないのですけど)、これも説明のつかないオカルト因の典型とされていました。
Copenhaverの論文はこの二つの力がどのように考えられてきたかを、古代から初期近代に至るまで追跡した論文です。
分からない単語が多くて読むのは手間ですが、でもそれなりに面白いです。個人的に発見というか気づかされた点もいくつかありましたし。
ただ本当に上の二つの力の歴史以外は何も書いていないので、何かオカルト因一般についてこの論文から学ぼうとしても無駄になりそうです。
個人的に面白かったのは、あんなに小さなコバンザメだって船をとめられるんだから、無力な神父だって説教で王侯貴族が悪行をはたらくのをとめられるはずだ、と説教している神父がいたというところです。すごい説教・・・。