メランヒトンの自然哲学2
The Transformation of Natural Philosophy: The Case of Philip Melanchthon (Ideas in Context)
- 作者: Sachiko Kusukawa
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1995/03/09
- メディア: ハードカバー
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読み終わりました。すばらしかったです。今の私の関心と重なっているということもあったのかもしれません。
科学史では時々プロテスタンティズムと近代科学とか、カトリックと近代科学とかいった問題設定がなされます。
しかしKusukawaはそういう問題設定は拒否します。この前読んだMethuenも同じことを言っていました。両者共に、プロテスタンティズムを一くくりにして論じることには歴史的な意味がないと考えています。言い換えれば、改革派内部の多様性を考慮しなければならないということです。
確かにカルヴァン派とルター派の区別もつけずに議論が進んでいく歴史系の論文を見たことがあります。あとイングランドだけをみてプロテスタントについて論じていたり。
Kusukawaの研究で面白かったのは、メランヒトンが自然哲学を重視した主要な動機として、ルター派を他の改革諸派(ツヴィングリや再洗礼派)から区別することがあったという点です。これも改革派内部の多様性を考慮に入れないと見えてこない視点です。
あとこまごまとした点では
- プリニウスの『博物誌』第2巻が重視されていた。ヴィッテンヴェルクでは1545年以降教科書に。
- メランヒトンがやたらガレノスを高く評価していた。というか医学を重要視していた。となると、このあたりの医学の状況についてまとめて調べた研究がほしくなります。ケルンについてはid:narrensteinさんがやってくれているのですが。
- mens architectatrixという表現で神を指すというのは誰が始めたのだろう。
- ルターのことを「ゲルマニアのヘラクレス」と呼ぶのですね…。
教皇、オッカム、スコトゥス、ホルコット、ペトルス・ロンバルドゥスなどをフルボッコにするゲルマニアのヘラクレスことルター。