immateriatus再び

 惑星の運行を説明する際にケプラーが用いる「質料化された immateriatus」という用語(『新天文学』第34章など)は,そのソースがいまだ明らかとなっていません.これまで私は中世にはこの単語が用いられたことはないと思っていたのですけど,実はルルスが『アヴェロエスの誤謬に対する説教』の中で用いているようです.

一方アヴェロエスは次のように述べた.知性というのは身体の形相ではない.なぜなら身体によって知性は質料のうちに個別化されるのであり,その身体というのものは普遍を知ることができないからである.このためアヴェロエスは次のように考えた.すなわち唯一の知性がすべての人間で質料化されている(immateriatus)と.

Auerrois autem dixit, quod intellectus non est forma corporis, per hoc quia esset particulatus per materiam, et non posset intelligere uniuersalia. Et propter hoc considerauit, quod esset unus intellectus in omnibus hominibus immateriatus.*1

 ルルスがケプラーのソースであるとは思えないのですけど,ともかく中世にも用例があって,それがアヴェロエスとの関係で用いられているのが興味深いです.

*1:Sermones contra errores Auerrois, pars 9.