占星術の歴史 山本啓二

　今日は午後から東京工業大学に行って、山本啓二さんの講義を聞いてきました。題して「占星術の歴史について」。ただどうやら午前中からレクチャーは行われていたようで、そこでは「イスラーム科学はどのように興り、なぜ衰退したか」というテーマで話されていたそうです。そちらも出席すべきだったなぁ。

　午後の講義自体は、1. 日本における占星術研究の現状、2. 占星術研究の利点、3. David Pingree (1933-2005)の業績、4. 占星術の種類、5. 私自身の研究といった五部構成で、それぞれのテーマについて簡単な紹介を行うという内容でした。さすがに私にとってはまったく知らない分野というわけでもなかったので、先生が話されてたことの大部分は既知のものでした。ただなんというか、話を聞いていて思ったのは、「ああ、この人は文献学者なんだな」ということ。世の中には写本を集め、テキストをつくり、翻訳をおこない、註をつけるという作業に魅せられた人々が一定数いて、学問を支えているわけです。山本先生もそのうちの一人なのだなと強く感じました。

　山本先生の研究の神髄は日本語では読めないために、あまりその偉大さが知られていないように思います。とはいえ以下の三冊の翻訳でお世話になっている人は多いのではないでしょうか。

西洋占星術の歴史

ギリシア思想とアラビア文化―初期アッバース朝の翻訳運動

カルダーノのコスモス―ルネサンスの占星術師

　研究者としての本当の姿を垣間見たいならば次の諸作品のうちのどれかを手にとればいいでしょう。特に真ん中の二冊は分厚いですが、世にも珍しい歴史占星術の書です。歴史占星術とは何か？それは読んでのお楽しみでしょうか。

The Abbreviation of the Introduction to Astrology: Together With the Medieval Latin Translation of Adelard of Bath (Islamic Philosophy, Theology, & Science)

Abu Ma'Sar on Historical Astrology: The Book of Religions and Dynasties on Great Conjunctions (Islamic Philosophy, Theology, & Science)

On Historical Astrology: The Book of Religions and Dynasties (Islamic Philosophy, Theology, and Science, V. 33-34)

Al-Qabisi (Alcabitius): The Introduction to Astrology (Warburg Institute Studies & Texts)