- 作者: ペルシウス,ユウェナーリス,国原吉之助
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/05/17
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ユウェナーリスは作品の冒頭でなぜ諷刺詩をうたったのかを説明しています。それは現在ローマの都で行われている悪習汚俗への義憤からでした。「じっさい今日ほど悪徳の収穫が豊かであったときがあったか。貪欲が今日ほど広く懐をひろげたときがあったか、博奕にこれほどたくさんの者がのぼせたときがあったか」(82ページ)。
とくにユウェナーリスが指弾の対象としたのが、「都のどの街路も気味の悪い性的な倒錯者で溢れている」という事態でした(89ページ)。この倒錯者とは男性の同性愛者を指します。詩人にとってなお悪いことに、この人々は自分たちの行いを棚に上げて、他人の男性同性愛行為や女性の姦通行為を非難していました。彼らは「偽善者」なのです。
男性の同性愛者がローマに多数いることについてユウェナーリスは次のように言います。
この男色という染みは伝染による病気だ。これからも多くの人に伝染するだろう。ちょうど農村の家畜の群れ全体が、ただ一頭の豚の湿疹や疥癬によってみんな倒れるように。(94ページ)
おお、都ローマの父ロームルスよ、ラティウム地方の牧人たちを冒している、この自然の掟に悖る同性愛はどこからやってきたのか。見よ、一人の男に対し、先祖も世襲財産も世に聞こえた名士が、妻として娶わされているのを。(97ページ)
もう少し長く生きたら、このような[男性同士の]結婚式がおこなわれるだろう。それも公然とおこなわれるだろう。いや、それが国民日報で公表されることすら望むようになるだろう。(98ページ)
この伝染病としての男性間同性愛はローマが占領した地域ではあまり見られません。しかし征服された地の係属がローマで生まれ、そこで大人となった場合、やはり男性同性愛の風習を身につけ、それを属州に持ち帰ることになるとユウェナーリスは危惧の念を表明します。
詩人にとって不幸中の幸いであったのは、人間が自分の肉体を思いのままに変える力を自然から与えられていないことでした。だから男性の同性愛者たちは「子を産めないまま死んで行く」(98ページ)。
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