満州事変以降の対外関係論 三谷「国際環境の変動と日本の知識人」

学問は現実にいかに関わるか

学問は現実にいかに関わるか

  • 三谷太一郎「国際環境の変動と日本の知識人」『学問は現実にいかに関わるか』東京大学出版会、2013年、133–182ページ。

 満州事変勃発から太平洋戦争開戦までの対外関係研究者の議論を追った論文です。ポイントは「国際法の領域における特殊の普遍化、あるいは例外の一般化」(140ページ)がこの時期の知識人たちの立論で起こっていたことです。満州事変は当時の普遍主義的国際法秩序の破壊でした。これを正当化するために論者たちは、満州の特殊性を主張すると同時に、そのような地域では普遍主義でも国家主義のあいだにある地域主義が必要であると説くようになります。日中戦争以降は戦線の拡大とともに、満州に限定されていた例外論が、拡大し地域主義は東亜新秩序として構想されるようになります。ここで普遍主義に代わる新たな受け皿として採用された地域主義はナチス・ドイツ地政学(Geopolitik)とカール・シュミットを中心とする欧州広域国際法の理論に基づいたものでした。積み上がっていく既成事実に対応する理論の組み換えと、そのリソースとなる理論の外部からの導入。