感覚の機械化と霊魂なしの心理学 Hatfield, “Mechanizing the Sensitive Soul"

Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy (History of Science and Medicine Library / Scientific and Learned Cultures and Their Institutions)

Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy (History of Science and Medicine Library / Scientific and Learned Cultures and Their Institutions)

  • Gary Hatfield, “Mechanizing the Sensitive Soul,” in Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy, ed. Gideon Manning (Leiden: Brill, 2012), 151–86.

 デカルトによる霊魂の機械化についての論文です。デカルトは人間霊魂による活動以外はすべて物質から説明しようとしました。物質というのは延長だけからなり、この物質の大きさ、形、位置、運動から自然現象は説明できるというのです。ここからデカルトは従来のアリストテレス・ガレノス主義者たちが、栄養摂取霊魂と感覚霊魂の能力にうったえて説明してきたことを、機械論的に説明する必要が生じました。感覚霊魂の作用として説明されてきたこととしては、五感と内的感覚があります。内的感覚とはたとえば、りんごの色や形といいう感覚情報は、「それがりんごである」とか「それがりんごであり、食べられる」とかいうことを教えてくれないことから、感覚内容から一定の判断を引きだす能力を感覚霊魂に付与するために想定されました。この他にも記憶などが内的感覚とされます。『人間論』を見ると、これら五感や内的感覚をデカルトが刺激と脳のメカニズムとの相互作用から説明している様をみてとることができます。これによりデカルトは19世紀より以前に「霊魂なしの心理学」をはじめていたことがわかるのです。