- 作者: Gideon Manning,Mordechai Feingold
- 出版社/メーカー: Brill Academic Pub
- 発売日: 2012/06/01
- メディア: ハードカバー
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- Roger Ariew, “Descartes and His Critics on Matter and Form: Atomism and Individuation,” in Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy, ed. Gideon Manning (Leiden: Brill, 2012), 187–201.
初期近代における質料形相論と個体化の問題の関係を論じた論文です。中世以降のスコラ学では質料と形相の一体性よりも、その独立性を重んじる立場が優位に立つ傾向性がみられます。質料は純粋な可能態であるから必ず質料と結合していなければならないというトマス・アクィナスの考えにたいして、スコトゥスは第一質料でも形相から独立に存在しうると主張しました。そのように考える方が聖餐での実体変化を説明しやすいということから、スコトゥスの学説は支持を集めることになります。これと同時に質料がになっていた機能を形相に移すことが行われるようになります。たとえばアクィナスは個体化の原理を質料においたのにたいして、それでは質料を持たない存在(天の知性など)の個体化が説明できないとして、むしろ形相こそ個体化の原理であると主張されるようになりました。ここで17世紀以降、形相を否定して自然現象の説明を質料に還元する学説が多く提示されるようになります。その終着点にいるのはデカルトであり、彼は延長である物質の大きさ、形、配置、運動から自然現象は説明できると考えました。しかしそうすると形相に帰された個体化の原理が宙に浮いてしまいます。ここを説明するためにデカルトは個体とは物質による運動の共有に他ならないとしたものの、これは広く賛同を得られたとはいえない解決策でした。そこでたとえばCordemoyはデカルトの自然学を原子と真空を想定する原子論に改変し、運動からではなく形状から個体化を説明しようと試みました。しかしライプニッツは形状を個体化の原理とみなすと、異なる形の部分が結合してできた同じ形の形状を相互に区別することができなくなるとして、やはり事物の個体性を説明するには延長以外の原理、すなわち形相が必要であるという結論に至りました。こうして一度は廃棄された形相が個体化の問題を軸に再浮上したのです。