- 作者: 上智大学中世思想研究所
- 出版社/メーカー: 知泉書館
- 発売日: 2013/03/30
- メディア: 単行本
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擬ディオニュシオス・アレオパギテース(6世紀はじめ頃)と証聖者マクシモス(580–662)が、人間がより多く神に関与するための道筋についていかなることを考えていたかを明らかにする論文である。擬ディオニュシオスはあらゆる存在は善を希求しており、とりわけ人間は善き意志を持って希求することにより、より多く神に与ることになると考えた。この思想はマクシモスにも継承されている。ではなぜ人間の善き意志は神への接近を可能にし、また神の側はそのような人間の意志に開かれているのか。擬ディオニュシオスによれば、その根拠は神として受肉したイエス・キリストにある。キリストの受肉によりその働きが人に示されたがゆえに、その神人としての存在への愛へと人間は促され、その善き意志から神へと上昇していくのである。擬ディオニュシオスとマクシモスの思想には、神を否定するのでもなく、さりとて神を超越の彼方に消去してしまうのでもなく、イエス・キリストを根拠に意志によって神へと与っていく道筋が確保されていたと言える。