科学史の創始者をめぐるこぼれ話 "George Sarton, His Isis, and the Aftermath"

 Isisが100巻をむかえたのを機に組まれたジョージ・サートンをめぐる特集からの一本である。目新しいことはとくに書かれていないし、深い洞察がめぐらされるわけでもない。既知のことがらを語るさいに著者が散りばめている逸話を楽しめばいいだろう。たとえば、サートンが1913年にIsisを創刊したとき彼は何歳だったか。29歳である。初期のIsisの記事のほとんどをサートンが書いていたことは、図書館で古いIsisをくったことがある人なら誰でも知っているだろう(そして驚いたことがあるだろう)。ではどれくらい書いていたのか。最初の5巻は3,100ページ以上にのぼる。そこにサートンは論文70本、書評527本、書誌ノート9,196本を寄稿している。サートンは科学史を通じて諸学の統一を目指していた。それから約100年たっていまの科学史はどうなったか。統一的な知識の樹を育ててきたどころの話ではなく、むしろ広大な森のなかに大小様々な茂みやら林やらが並び、それらがしばしば交差しあっているという混沌とした状況を出現させている。この生物多様性はエコロジストを喜ばせはしても、夢見るサートンを落胆させるだろう。