ルネサンス文化の拡散 Tedeschi, "Italian Reformers and the Diffusion of Renaissance Cultures"

 イタリア出身のプロテスタント学者たちが、北方の宗教改革にあたえた影響を調べた諸研究をサーヴェイした論考である。基本的にはCantimoriのEretici italiani del Cinquecento (Firenze, 1939)を受けての研究がいかに進展してきたかを論じている。Cantimoriはイタリアから北方に亡命した学者たちを、正統的と異端的の二種類にわけた。正統的な学者たちは北方のプロテスタント諸教会に忠実であった。一方異端的な学者たちは大部分が俗人からなり、既存の神学教義の多くを疑い、諸教会の枠組みに収まることはなかった。この後者のカテゴリーに属する人々が、イタリアの文化を北方に伝えるとともに、宗教的寛容の精神を最初に説いた集団を形成することになる。異端的学者たちに着目したCantimoriや続く研究者たちとは異なり、近年の研究はまず正統的と異端的という区分がとくに困難であり、しかも正統的と分類されるような学者たちも、イタリアの学知(とりわけ世俗的学知)を北方に伝えるにあたり大きく貢献したことを指摘している。イタリアでの検閲が厳しくなるにともない、ダンテ、ボッカチオ、マキェベリ、ポンポナッツィらの書物の出版は困難となった。このような著述家たちの本が以後も印刷されえたのは、イタリアから北方に亡命した知識人たちのおかげなのであった。