石原都知事の図書館司書をめぐる発言について

 もうあちこちで話題になっていますが、石原都知事が図書館の司書について、(少なくとも私の考えでは)いささか見識を疑わざるをえない発言をしています。

【記者】都立図書館の司書について伺いたいんですが、今、136人いるんですけども、 2007年問題団塊世代の司書が大量退職して、この5年で半分の68人ぐらい定年になるんですけども、一方で20代の司書というのが1人もいないんですけども、ちょっとこういう現状になっていまして、せっかく作家である石原さんが知事をやっているので、こういった文化行政の衰弱というのはあまり好ましくないんじゃないかなと思うんです。

 2002年度から新しい司書を採用していないんですけども、そういう意味で、若い世代の司書を育てるという意味でも、早急な採用の再開とか…。

【知事】図書館の司書ってのは、どんな仕事をするの。

【記者】レファレンス業務といって…。

【知事】ある図書館なんか、外国でも日本でもそうですけど、身元がしっかりしてたら、オートマティックに本を借りられるシステムになっていますよ。

 どの本がいいか悪いかということを司書に相談する読者なんて、ほとんどいないと思うんだね。私は司書の仕事っていうのは、何も若い人だから非常にサービスが行き届かないってものじゃないと思うけど、今の時代に人間を配置しなくたって、オートマティックに本を借りられりゃいいじゃないですか。

 自分が選ぶってのは、自分で自分を選ぶって、その読者の感性なんだから、そこまで司書が指導することもないし、できたものでもないし、そんな業務、果たしてなかったと思うしね。

 この時代に、人手が足りなくなってきた。私はやっぱりそう思うけど、その中で人件費を払って、旧来の何ていうのかな、図書館作業というものを人を雇ってするような時代じゃないんじゃないかな。本は本であるんだから。

はい、それじゃ

 この発言の内容が図書館司書の仕事の実態を踏まえていないものであることについては、id:kamo_negitoro さんが至極まっとうなコメントをされています。

http://d.hatena.ne.jp/kamo_negitoro/20061108/p1#seemore

 私にとって一番納得がいかないのは、記者の質問に対して「図書館の司書ってのは、どんな仕事をするの」とまず聞いておいてから、「旧来の何ていうのかな、図書館作業というものを人を雇ってするような時代じゃないんじゃないかな」と石原都知事が話を進めている点です。

 少なくとも最初の発言から判断するに、石原都知事は図書館で司書がどのような業務を行っているのかについて、基本的な知識を持ち合わせていないように思われます。

 しかし、なんであれ一つの仕事の存在意義を公の場所でこれだけはっきりと否定する以上は、その業務内容について多少なりとも知識を持っていることが当然の前提となるのではないでしょうか。

 石原都知事が図書館司書の職務内容を知らないことを批判するつもりはありません(人間ならば知らないことがあるのは当たり前なので)。

 ただ、業務内容も知らない職業について、その存在意義を否定しまうのは、行政の責任者として軽率すぎる発言だと思うのです。 (坂本邦暢)