『カラマーゾフの兄弟』がベストセラーなのはともかくスメルジャコフはフョードルの私生児ですか?

 なぜ今カラマーゾフかというのは問いとしておかしいのであって、いつだってカラマーゾフは現役なのです。当然のことながら新訳ばかりに注目が集まっていますけど、実際読み返してみると新潮文庫所収の原訳だって決して悪くないですよね。ただ前までは文字が小さすぎてつらかったかも。今は大きくなって読みやすくなりました。

 ところで上記新聞記事のあらすじ紹介で気になった点が一つ。

 物欲の強い父と、性格や生い立ちが異なる3人の息子、そしてもう1人の私生児が繰り広げる愛憎劇。父が他殺体で発見され、兄に嫌疑がかけられ裁判となる。人間の悪魔性、神性をえぐり出す長大な思想小説で、フョードル・ドストエフスキー(1821〜81)の最高傑作といわれる。

 「もう1人の私生児」というのはもちろんスメルジャコフのことです。

 そしてこの書き方はスメルジャコフがフョードルの私生児であることを前提にしているように見えます。しかしスメルジャコフが本当にフョードルの息子かというとこれは大問題で、それだけで研究論文がたくさんありそうです。もちろん私生児かどうか分からないように書いてあるのがドストエフスキー一流の創作技法ということなのでしょう。

 個人的にはスメルジャコフをフョードルの子供と考えるのは難しいかなと思います。小説内でスメルジャコフが最後に取る行動はカラマーゾフとは相容れないような気がするので。