ストア派と悪の問題 - ロングの論文

 先日(参照)言及したロングの論文を読みました。

  • ストア派の悪概念」 A. A. Long, "The Stoic Concept of Evil", Philosophical Quarterly 18 (1968): 329-43.

 真ん中あたりから情動と同意に関する専門的な議論が登場して理解不能になりました*1。このあたりの立ち入った議論はまさにprokoptonさんのご専門ですね。私の方から述べることはありません。

 興味深かったのはポーレンツという有名な研究者の意見です。「世の中に悪が生じる原因は質料にある」という見解をストア派が支持したとポーレンツは考えたそうです。この点については以下を見よとあります

  • ストア派:ある精神的運動の歴史』 Max Pohlenz, Die Stoa: Geschichte einer geistigen Bewegung, 3rd ed. (Göttingen: Vandenhoeck, 1964), 1:100.

 ロングの考えではポーレンツが提示している論拠は「せいぜい両義的」という水準にとどまるそうです。さてどうでしょうか。

*1:情動については、A. A. ロング、『ヘレニズム哲学 - ストア派エピクロス派、懐疑派』、金山弥平訳、京都大学学術出版会、2003年、265-70頁に簡単な解説があります。