近藤、ストア派の「運命」概念の起源を辿る

 先日紹介したピンダロスについての著書を書いた逸身さんの退職記念論文集が発売されました。

西洋古典学の明日へ: 逸身喜一郎教授退職記念論文集

西洋古典学の明日へ: 逸身喜一郎教授退職記念論文集

目次は出版社である知泉館書院の頁を見てください。

 その中におさめられた論文がこちら。

  • 近藤智彦、「ストア派の『運命』概念の起源を辿る」、215-233頁。

 ストア派の大成者クリュシッポスによる運命概念の定義は二つの要素からなっている。そのうちの一つは初期アカデメイア派にさかのぼるもので初代学頭ゼノンによって定式化された。もう一つはより後の時代にエピクロス派の影響を受けてクリュシッポス自身によって定式化されたものである。

 このような主張がなされています。かなりぎりぎりの推測ですけど、残された資料の性質上こうやって問題提起をしていくしかない領域ですね、これは。

 ところでこの論文は逸身さんの退職記念集に書かれたものですけど、案外中身には逸身的なものはありませんでした。もし私が書くなら、最初の方に出てくる悲劇を運命劇として見るという見方についての逸身さんの話を枕にして、そのあとストア派につなげていったと思いますけど、さすがに近藤さんはストイックですな。

 近藤さんの博士論文をはやく読まないといけないと思ってまだ読んでいないのですよね。今度丸一日かけて読みに行こう。