ギリシア人註釈家による『気象論註解』

 ギリシア人註釈家のうちで,アリストテレスの『気象論』に註解をほどこしたのは,アレクサンドロス,フィロポノス(1巻のみ),オリュンピオドロスの3人です.今日はこの3人の『気象論註解』を眺めていました.なぜそんなものを見ていたかというと,スカリゲルが使っていたからということになります.調査の結果,スカリゲルは少なくともアレクサンドロスとフィロポノスの註解は(これまた少なくとも間接的には)見ていたことが分りました.特にフィロポノスへの依存が大きいです.

 『気象論』の伝承に関しては,シリア語,アラビア語圏での状況についてはそれなりに研究が進んでいる反面,なぜかギリシア語圏については研究が手薄になっています.英語訳もアレクサンドロスの第4巻註解しか出されていません.他の現代語訳としてはオリュンピオドロスの第4巻註解のフランス語訳があるだけだと思います.今日見た感じでは,アレクサンドロス,フィロポノス,オリュンピオドロスのそれぞれが好き勝手にいろいろ言っていておもしろかったので,これはギリシア哲学史でパイオニアになりたい人にとってはうってつけの課題かもしれません.