アヴィセンナ、『治癒の書 自然学』

 昨日の記事で紹介したアヴィセンナの『治癒の書 自然学』のアラビア語-英語対訳がさっそくにも自宅に届きました。アマゾンのお急ぎ便の速さに脱帽。それはともかく2冊組で1000頁もあるモンスターのようなサイズの本です。

The Physics of the Healing: A Parallel English-Arabic Text; Books I, II, III, & IV (Brigham Young University - Islamic Translation Series)

The Physics of the Healing: A Parallel English-Arabic Text; Books I, II, III, & IV (Brigham Young University - Islamic Translation Series)

 本書で訳されているのはアヴィセンナの主著である『治癒の書』の(狭義の)『自然学』に該当する部分です。実は序文を読むまでまったく知らなかったのですけれど、すでにペルシャ語トルコ語の訳があったのですね。とはいえアラビア哲学の専門家以外でも容易にアクセスできる言語に訳されたのはこれが初めてです。

 何といっても気になるのは中世に作られたラテン語訳との対応関係です。

ここの第1分冊「原因・原理論」、第2分冊「運動論」、第3分冊「量論」が本書の最初の3つの論考にあたります。ご存知の通りラテン語訳は第3論考の10章までしかないので、第3論考の最後の部分と第4論考はアラビア語にしかありません(よってこの英訳には収録されています)。

 しかし膨大な分量にもかかわらず、改めてみると『治癒の書』の「自然学」のうちで、まさにアリストテレスの『自然学』に対応する部分しか訳されていないことがわかります。このシリーズでさらに他の部分の英訳が出されることを期待したいですね。