神とは何か、支配者とは何か ローマ帝国における皇帝崇拝

ローマ帝国 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

ローマ帝国 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

 盛期ローマ帝国を扱った極めて優れた入門書から、第2章「皇帝の権力」です(26–51頁)。ローマ帝国の支配に組み込まれた諸地域では、その土地に元来伝わっている神話や伝承を、神たる皇帝が支配する現在という時に接続し両者を融合させるということが頻繁に行われました。たとえばギリシアの都市ならば、町の守護神・伝説上の建設者・歴史上の町の建設者のそれぞれの像が、現在のローマ皇帝像とならんで町を練り歩くといった具合です。またガリアでは皇帝に由来する名称とガリア由来の名称が混じり合った独自の神格が生み出され顕彰されていました。こうして実際にはローマとはなんの関係もない過去や土着の神話・伝承体系が、皇帝崇拝と結び付けられることで、人々はローマの支配を過去からの連続的発展の帰結として意味づけそれに納得することができたというわけです。ローマの支配に意味を与えてくれる神としての皇帝という認識を端的にあらわした衝撃的なテキストが伝えられています。エジプト出土の紀元2世紀のパピルス片に残されている問答集の断片には次のように書かれているそうです。

神とは何ですか?—権力の行使のことです。
支配者とは何ですか?—神のようなものです。