パヴェーゼ「流刑地」

祭の夜 (岩波文庫)

祭の夜 (岩波文庫)

 語り手は北イタリアのピエモンテから「仕事の奇妙ないきがかりから、まさにイタリアの南の果てにとばされ」た人物です。彼は滞在している海沿いの村を好きになれない(そこの男たちは「土地の畑や道と、血肉を分けあおうとはしなかった」)まま、道路工事の監督者として働き、日暮れには居酒屋で過ごすという生活を送っています。しかし彼には背後にある山々を超えたところで「自分を待つ人がいる」という希望がある。だがしかし村にはかつて妻が他の男と駆け落ちした苦痛に耐えかねて気が狂れてしまったチッチョという男と、かつて自分の妻だった女にいいよった軍人を殴り流刑に処せられている機械工がいます。機械工いわくその元妻は「他の男とベッドにいる」。この二人の存在が妻により裏切りという行為を強く意識させる中、語り手は金髪の小娘という「品物」と交わります。その後、機械工の元妻が同棲していた男に殺されます。語り手はその後、チッチョと機械工が村でいっしょにいるのを目撃します。雨がふり、海が荒れ、山並みが見えなくなったことで背景を失ってしまった村から語り手は旅立ちます。「いつものように、光の死に絶えた朝、ぼくは旅立った、自分の宿命へ向かって」。

 チェーザレパヴェーゼ(1908–50)はイタリアの小説家。この『祭の夜』という短編集は彼の死後、イタノ・カルヴィーノが未発表の短編小説群の中から10編を選んで出版したものです(1953年)。「流刑地」が実際に書かれたのは1936年の7月5日から24日にかけてです。内容にはパヴェーゼの個人的経験が色濃く反映されているようです。翻訳の質は非常に高いと思われます。