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グローバル・ヒストリーで現在有力視されているモデルにシステムに依拠したものがあります。世界にある各地域が一つの安定的な単位として機能し、その崩壊のためには何らかの破壊的要因(たとえば外部からの侵略)がなければならないと考えるものです。このような歴史のとらえ方は、アンリ・ピレンヌにさかのぼります。『ヨーロッパ世界の誕生 マホメットとシャルルマーニュ』のなかでピレンヌは、イスラム帝国による海の道の遮断が、西ヨーロッパの孤立とそれにともなう経済的文化的衰退をもたらし、これがシャルルマーニュによる西ヨーロッパ世界の条件となったと論じました。ピレンヌの研究は交易条件の変化という長期的で構造的要因に歴史の変化の説明を求め、それにより世界の異なる部分(システム)の間にある関係性を指摘し、しかもそれによりヨーロッパの変化をヨーロッパ外部よりもたらされたものとして捉えるという特徴を有していました。
世界システム論の名を冠した壮大な理論のなかで、イマヌエル・ウォラーステインは資本主義が示す発展と衰退のサイクルと、それへの応対というメカニズムが、対外拡張を通じて遠隔地を周縁ないしは半周縁として従属させることで経済発展を続けることをヨーロッパに可能にし、最終的には19世紀に見られるような特異な世界支配をもたらしたというテーゼを打ち立てました。
内藤湖南や仁井田陞は宋代に近代社会と資本主義経済を有していたと論じていました。このような諸研究を受けてヨーロッパの資本主義を正常な資本主義として標準化しないように心がける研究が生まれました。ケネス・ポメランツの『大いなる分岐』は中国とヨーロッパの繁栄のレベルは19世紀まで同レベルであり、そこからの分岐にしてもヨーロッパの資本主義経済の内的な発展の帰結というよりむしろ、アメリカ大陸という巨大な土地をヨーロッパが得ることができたといういわば偶然の帰結に過ぎないと主張しました。
一方フランク『リオエント アジア時代のグローバル・エコノミー』はヨーロッパの繁栄というのはいかに中東やアジアとつながっていられるかにかかっていたと論じ、長期的には世界はふたたび中国を中心とし、そことつながることで繁栄が達成されるようなものへと戻るのではないかと示唆しています。
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