ガリレオシリーズ第5作 東野圭吾『聖女の救済』

聖女の救済 (文春文庫)

聖女の救済 (文春文庫)

  • 東野圭吾『聖女の救済』文春文庫、2012年。

 飛行機の中で読みました。東野圭吾によるガリレオシリーズのうちの一冊です。ガリレオの異名をとる物理学者の湯川が警察の操作に協力することで難事件を解決するという筋立てを持つシリーズです。あいかわらずきわめて読みやすい文章で書かれています。これほど多筆してもこの点で一切質を落とさないのはすごい。各登場人物が定型的かつ魅力的に描かれていて一種のキャラクター小説としても読めるようになっています。内に強い意志を秘めながら物静かで理知的な犯人女性像(誰が犯人であるかは最初に明示されるコロンボ型)とか、刑事と湯川のあいだの信頼関係とかの描き方があざとい。本筋のプロットもトリックもよくできていています。正直トリックにはビビる。『悪意』の時も思ったけど東野さんはこういうタイプの書き方に秀でているように思いました。もう話の筋と物理学が関係なくて、これガリレオシリーズじゃなくてもいいんじゃないかと思うだけど、でもそこはキャラクター小説シリーズですからね。