皮膚と顕微鏡 Hennepe, "Of the Fisherman’s Net and Skin Pores"

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

  • Mieneke te Hennepe, "Of the Fisherman’s Net and Skin Pores: Reframing Conceptions of the Skin in Medicine 1572–1714," in Blood, Sweat and Tears: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff, Helen King and Claus Zittel (Leiden: Brill, 2012), 523–48.

 顕微鏡の発明が皮膚に関する理論をどう変形させたかを論じた論集です。16世紀から17世紀の前半にかけて書かれた書物をみると、皮膚は身体の不要物を蓄える場所であるとされると同時に、その孔を通じて呼吸をしたりして外部から物質を取り込む器官として理解されています。あるいはヴェサリウスのように、皮膚から解剖学的な知見を得ようとすることを試みない人物もいました(彼の図版は皮膚をはいだ人間の姿)。顕微鏡が発明されると、皮膚に孔がある(ないしは皮膚が微細な鱗屑の集まりで、その隙間が通路となっている)といったことが実際に観察されるようになります。それにより議論の焦点は、この通路や孔を通してどう物質が出し入れされるかという具体的なプロセスの解明に移ります。ロバート・ボイルのように実験的に皮膚の孔の存在を確かめる人物もあらわれました。しかしこのような焦点の移行にかかわらず、皮膚の基本的な機能(物質の出し入れ)に関する理解は変わりませんでした。全く新しい皮膚の観念が現れるのは19世紀になります。