ガレノスの視覚理論 Boudon-Millot, " Vision and Vision Disorders"

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

 ガレノスの視覚理論を扱った論文です。視覚はプネウマの作用によって起こるとガレノスは考えました。脳で生成されたプネウマが管を通って目に到達し、そこで目を取り囲む空気に触れると、水晶体に像が形成され、これによってモノを見ることができるようになります。これはまた物体からダイレクトに視覚像が飛んできてそれを目が受容するという理論の否定でもありました。もしそうならばあまりに大きい事物の像は目に入りきらないし、またそれが多くの人に同時に受容されるということも考えられないというのです。むしろ媒介となる空気が道具的に働いて、これがプネウマと混ざることで変質し、像を形成すると考えるべきとガレノスは主張します。この理論はあくまで仮説であり、本当にこのようなプネウマの作用が視覚を生み出しているかはわからないとガレノスは言います。しかし視神経の解剖観察、白内障の症状観察、老人の視力低下、片目をとじたときに開けている方の目の瞳孔が拡大することはプネウマの存在を裏付けていると彼はしました。