自然、占星術、錬金術 グレゴリィ「アリストテレス自然学導入以前の中世哲学における自然観」#2

  • トゥッリオ・グレゴリィ「アリストテレス自然学導入以前の中世哲学における自然観(続) 12世紀」飯尾都人、近藤映子訳『イタリア学会誌』19、1971年、114–133ページ。

 後半では12世紀に見出された自律的な自然の観念がどう展開していくかが追われます。ディヴィンのダヴィド(1214年頃没)のような人物は、力として自然を理解する方向性を徹底させ、神と世界は同じ力であるという自然主義的な一元論を提唱するにいたりました。この世界観はアラビアに由来する天文学占星術と結びつき、月下の世界の事象は天より来る力によって支配・決定づけられているという教説を有力なものとしました。ここでは諸天体はもはや神的存在とはみなされていないものの、創造主の道具として人間や月下の世界に力をふるい続けることになります。占星術は天より来たる力を読みとって災いを避けることを目指します。同じように世界に満ちている力を利用する業として錬金術がありました。賢者のうちには自然の秘密の力がこめられているが故に、治癒力を持つとされるのです。ここに世界にある力を操作する人間という観念が見て取れます(ピコ『人間の尊厳について』の先駆)。同時に自然概念の自律は、人間行為の範型としての自然秩序という考え方を産み、これが神の法から分離した世俗的倫理、自然法を発見させることになります。