中世の質料形相論 Pasnau, "Form and Matter"

The Cambridge History of Medieval Philosophy 2 Volume Boxed Set

The Cambridge History of Medieval Philosophy 2 Volume Boxed Set

  • Robert Pasnau, "Form and Matter," in The Cambridge History of Medieval Philosophy, ed. Pasnau (Cambridge: Cambridge University Press, 2010), 635–46.

 中世の質料形相論における重要な論点をいくつか選んで解説した総論である。論点の一つの軸は質料に関するものだ。アヴィケブロンは被造物のすべてが質料をもつと考えた。これには天使も含まれる。この見解は当初フランシスコ会士を中心に支持を集めたものの、アルベルトゥスやアクィナスの頃には別の意見にとってかわられた。質料は物質的な世界にしかないというものである。たとえばアクィナスは、被造物のすべてが現実態と可能態の結合体であることは認めていたものの、場所運動をしないような非物質的な事物における可能態を質料とみなすことはできないと考えた。

 アクィナスにとって、物質的な事物の究極的な構成要素である第一質料は、あらゆる性質を剥ぎ取られた純粋な可能態であった。神ですら第一質料をそれ自体として認識することはできない。だがこれでは第一質料がなんであるかおよそ把握不能になってしまう。これにたいしてスコトゥスやオッカムは、第一質料に何らかの形でより多くの実在性を付与しようとした。ではその時、三次元世界を構成することになる延長と第一質料との関係はどうなるのか。アヴィセンナにとって、延長とは「物体性の形相 forma corporeitatis」が第一質料にやどってはじめて生じるものだった。一方アヴェロエスによれば、延長とは第一質料につねに宿っている付帯的形相であり、これら二つの組み合わせによって第一質料は延長を持つようになる。だがそれらは具体的な形相抜きには、何らの形もとらない。それゆえそのような第一質料は未規定の状態にあるとアヴェロエスは呼んだ。スコトゥスは第一質料は延長を書いているが部分を持つと主張した。このスコトゥスの意見はオッカムに不明瞭であると批判される。そこでオッカムは質料は延長なしには存在できないとしたのだった。

 論点のもう一つの極は形相に関わる。形相は質料と対になって、実体を構成する。この形而上学的な側面と同時に、形相は事物の本質として事物に様々な性質を発現させるという因果上の役割を果たすという役割も持っていた。中世において形相はこの両側面をつねに有していたものの、時が経つにつれて後者の因果的な役割が重要視されていく。形相をめぐるもう一つの重要な論点は、一つの実体がいくつの形相を持つかというものであった。

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